一番最初は鴻さんからのメールでした。
綺麗な日本語で、丁寧に自分の想いを書き綴ってあって、
写真に対する想いも持ってられるようでしたので、
そんな方に撮影者として選んでもらえて、とても嬉しかった記憶があります。
最初にメールを頂いてから、本番の撮影日まで、四ヶ月くらいかかったのかな。
テストシュートや打ち合わせ、小物合わせ、フルコースでした。

だってゴスロリ撮った事ないんだもん^−^;

その世界を好きな方にとって、聖地である訳ですから。
上辺のイメージのみで、例えば服のメーカーなんかメイデンくらいしか知らない自分が、
土足で踏みにじる様な事はあってはならないと思ったんです。
それっぽい服で、それっぽいロケーションで、
「ほら、なんかそれっぽいの撮れたヨ♪」
なーんてやっちゃった日には、ぶっとばされて当然でしょう、と。
そんな事やってたら、
いつまでも真実にはほど遠い所でバタバタしてる人になっちゃう。
幸い鴻さんはとても協力的な方で、
僕が世界を知る手助けを沢山やってくれました。
直接言う事なんだろうけど、恥ずかしいのでここで。
感謝しています。ありがとう。
以前に廃墟へ写真を撮りに行った後、タナトスにやられて、
もう二度と行かない!
なんて思わされて帰って来た事があって。
でも鴻さんから頂いたメールには、廃墟でゴスロリをやってみたい、とありました。
好きな人には綺麗な世界かも知れないけれど、
廃墟に行くっていうのは、写真に写らない大変な苦労があったりするんですね。
服が汚れたり、破れたり、負傷したりなんて日常茶飯事で、
散乱しているガラス、板から飛び出た腐った釘、野犬、住んでいる浮浪者との遭遇、
床が抜けたり、上れば崩れ落ちる階段、
死体との遭遇なんてのも想像の世界の事ではありません。
まず第一に建造物不法侵入ですし。
何か壊れてしまえば器物破損。
トイレだってありません。
とても女の子を連れていくような場所では無いんです。
迷って色々話したんですが、
色んな困難を踏まえた上で、彼女の意志を尊重しようと決めました。
安易な気持ちで行くと、死ぬか捕まるかなんです。

メンタルな部分で、自分なりの「廃墟+ゴス」をやる意味を見つけるまで、ちょっぴり時間が必要でした。
「自然対人間の拮抗が行われている場所であるなら、
 僕が見たい、写したいのは自然の勝利している場所だ」
前回タナトスにやられて帰ってきていたので、今回はエロスで行くんだ。
リベンジもあったように思います。

写真の横に掲載させてもらっている文章は、全て鴻さんの日記からの抜粋です。
何日分かの日記から抜粋して、繋いで、一つにしました。
今回のテーマと完全にリンクしていたので、見た瞬間に載せようと決めました。
彼女をユリの化身、自然の象徴として捉えての撮影でしたから。
どっちの意味にもとれるってやつです。
ドキュメントが無いと、写真はつまんないよね。

生の力とその実際を、垢抜けて洗練された延長線上でどう描くか。
生きる事、息づく事って当たり前みたいに毎日繰り返される事で、
でもとても大変で辛くて、
それでいて、美しいものであって欲しくて。

造られて捨てられた場所も、
そこに種を降ろした生き物たちも、
ふらりとやって来た僕たちも。
同じように雨に降られて、
同じように陽の光を浴びて、
同じように闇につつまれて。

輪廻転生。長くて短い時間の中で、何かを残して行くこと。
実る事。その鼓動。
果琴抄。


許されれば、また。


0521/2005 bar_tender27